騒動の法的な決着となったのが、2021年4月15日の東京地方裁判所の判決だ。
立花氏が代表を務めるN国党と「マツコ・デラックス被害者の会株式会社」は、マツコ本人とTOKYO MXを相手取り、損害賠償を求めていた。
誰が誰を訴えたのか?訴訟の構造を整理すると、次のようになる。
- 原告1: NHKから国民を守る党(訴訟提起時の名称)
- 原告2: マツコ・デラックス被害者の会株式会社
- 被告1: マツコ・デラックス
- 被告2: 東京メトロポリタンテレビジョン株式会社(TOKYO MX)
ここで注意したいのは、マツコが立花氏を訴えた裁判ではないということだ。立花氏側が、マツコと放送局に対して損害賠償を求めた民事訴訟である。
訴状の請求額は以下のとおりだった。
| 請求主体 | 請求金額 | 請求の根拠 |
|---|---|---|
| NHKから国民を守る党 | 1,000円 | 党の信用毀損など |
| 被害者の会株式会社 | 82,000円 | 支援者82人の損害賠償請求権 |
| 合計 | 83,000円 | 損害賠償等 |
被害者の会株式会社は、支持者から損害賠償請求権を譲り受けて保有する目的で設立された会社だった。
したがって、訴訟の中心は、マツコの発言によってN国党や支持者の名誉が侵害されたかどうかという点にあった。
東京地裁はなぜ立花氏側の請求を棄却したのか2021年4月15日、東京地裁民事第44部は、原告側の請求をすべて棄却した。
判決の主文は明確だ。
- マツコに対する損害賠償請求:棄却
- TOKYO MXに対する損害賠償請求:棄却
- 訴訟費用:原告側の負担
ただし、判決理由には重要なニュアンスがある。
裁判所は、マツコの発言がN国党の社会的評価を低下させる内容だったこと自体は認めている。
具体的には、次の3点を検討した。
1.N国党の政治活動に対する評価
マツコの発言は、N国党が国政政党として適切な活動をできるのか、その活動内容はどのようなものなのかという疑問を視聴者に抱かせる内容だったと判断された。
つまり、政党の社会的評価を低下させるものと認められた。
2.発言が意見・論評の範囲を逸脱していたか
ここが裁判の最も要点だ。
裁判所は、発言の対象が国政政党の政治活動であり、公共の利害に関係すること、公益を図る目的があったことを認定した。
加えて、政見放送の再生回数が320万回を超えていたことや、特徴的な選挙活動が話題になっていたことなど、発言の前提となる事実にも根拠があった。
そのうえで、マツコの発言は意見・論評の範囲を逸脱していないと判断。名誉毀損の違法性は認められないとした。
3.支持者82人への侮辱が成立するか
裁判所は、マツコの発言から個々の支持者82人を特定することはできず、特定の支持者がふざけて投票したと受け取られるものでもないと判断した。
このため、支持者に対する不法行為も成立しないとした。
放送法第4条違反の主張はどうなった?立花氏側は、TOKYO MXが放送法第4条に定められた政治的公平性などの規定に反したと主張していた。
放送法第4条は、放送番組の編集に関する基準を定めており、政治的公平性や事実を曲げない報道などが規定されている。
しかし、今回の裁判では、放送法第4条に関する一般的な解釈や、テレビ局の政治的公平性に関するすべての問題が判断されたわけではない。
判決は、まずマツコ本人の発言について不法行為が成立しないと判断した。そのため、TOKYO MXの注意義務違反に関する主張についても、会社側の不法行為責任は成立しないとして請求を退けた。
ここを「裁判所がTOKYO MXの放送内容を全面的に正当と認定した」と理解するのは正確ではない。
立花氏は控訴したのか?立花氏は判決後、控訴せずに裁判を終結させる意向を示した。
2021年4月15日の報道では、立花氏は裁判をこれ以上続けない考えを表明している。
このため、マツコとTOKYO MXを相手取った一連の訴訟は、控訴審に進むことなく終結した。
【謝罪とその後】マツコは謝罪した?2人の関係はどうなった?

裁判が終わった後、もう一つ注目されたのが謝罪をめぐる問題だ。
インターネット上では「マツコが立花氏に謝罪したのか」「立花氏がマツコに謝罪したのか」という疑問が現在も検索されている。
謝罪したのはマツコではなく立花氏2021年4月16日、立花氏は裁判の結果を受けてマツコについてコメントした。
報道によると、立花氏は、マツコ個人を攻撃しているように思われたのであれば、そのように受け取らせた部分について申し訳ないという趣旨の謝罪を述べた。
また、マツコ自身もテレビというメディアの中で利用されているのではないかという見解を示していた。
ここで重要なのは、判決後に報道された謝罪は立花氏からマツコに向けたものだったという点だ。
マツコが立花氏やN国党に対して正式に謝罪したという事実は、判決記録や当時の主要報道からは確認できない。
その後、2人は和解したのか裁判終結後、両者が公開の場で直接対面して和解したという確かな報道は見当たらない。
少なくとも、2019年の騒動が再び大規模な抗議活動や訴訟に発展した事実は確認されていない。
この騒動は、法的には2021年の判決によって決着したものとして整理できる。
一方、マツコの芸能活動は継続しており、立花氏も政治活動や動画配信などを続けていた時期がある。
両者のその後を考える際には、裁判の勝敗と、個人同士の感情的な和解を同じものとして扱わないことが大切だ。
2026年現在、マツコは『5時に夢中!』に出演している?
マツコ・デラックス
TOKYO MX『5時に夢中!』
2026年9月7日にも月曜コメンテーターとして生出演したことが日刊スポーツで報じられている。
2026年9月時点でも、マツコは『5時に夢中!』の月曜レギュラーとして活動している。
TOKYO MXの番組公式出演者情報にも、月曜コメンテーターとしてマツコの名前が掲載されている。
したがって、2019年の騒動によって番組を降板したという情報は事実ではない。
【2026年最新】立花孝志の現在は?マツコ騒動以降の大きな変化
立花孝志
政治活動家・NHK党代表
2025年以降、兵庫県の元県議をめぐる名誉毀損事件で逮捕・起訴され、2026年も刑事手続きが続いている。
2019年当時、参議院議員としてN国党を率いていた立花氏は、その後も選挙や政治活動を通じて注目を集めてきた。
しかし、2025年から2026年にかけては、別の刑事事件によって大きな局面を迎えている。
2025年11月に名誉毀損容疑で逮捕・起訴立花氏は、兵庫県の内部告発文書問題に関連し、竹内英明元兵庫県議に関する発言をめぐって、2025年11月9日に逮捕された。
同月28日、神戸地検は立花氏を名誉毀損罪で起訴した。
起訴状によると、2024年12月から2025年1月にかけての街頭演説やSNSでの発信が問題とされている。
具体的には、竹内氏が警察の取り調べを受けていた、あるいは逮捕される予定だったという趣旨の情報などを発信し、同氏の名誉を毀損したとされる。
これはマツコとの2019年の民事訴訟とは全く別の事件であり、混同してはいけない。
2026年も勾留が続く状況2026年7月7日、立花氏側が申請した保釈は神戸地裁に却下された。
さらに7月21日には、保釈却下に対する準抗告も棄却された。
10月3日のFRIDAYデジタルの報道では、逮捕から約11か月が経過した段階でも勾留が続き、名誉毀損事件の初公判日程は決まっていないと伝えられている。
また、9月25日には、奥谷謙一兵庫県議への脅迫容疑について、神戸地検が再捜査の末、嫌疑不十分で再び不起訴とした。これは竹内氏に関する名誉毀損事件とは別の捜査である。
2026年10月には別の裁判にも出廷2025年3月14日、立花氏は東京・霞が関で街頭活動中に襲撃され、頭部に約3週間のけがを負った。
この事件について、2026年10月2日に東京地裁で裁判員裁判の初公判が開かれた。
立花氏は勾留中だったが、被害者参加制度を利用して出廷。被告人質問を行う場面もあった。
10月9日には、襲撃した宮西詩音被告に対し、東京地裁が懲役9年の判決を言い渡した。
2026年11月5日現在、立花氏をめぐる刑事事件と政治活動の状況は、2019年のマツコ騒動当時とは大きく異なっている。
ただし、これらの後年の事件は、2021年に終結したマツコとの訴訟の判決内容を変更するものではない。
【よくある質問】立花孝志とマツコの騒動に関するFAQ
Q1:立花孝志とマツコの騒動はいつ始まった?
A1:2019年7月29日、TOKYO MX『5時に夢中!』でマツコがN国党について発言したことが発端です。立花氏は8月12日からTOKYO MX前で抗議活動を始めました。
Q2:マツコは『5時に夢中!』で何を言った?
A2:N国党について、今後の活動を見極める必要があると述べたほか、「気持ち悪い人たち」という表現や、ふざけて投票した人もいるのではないかという趣旨の発言をしました。
Q3:立花孝志とマツコの裁判はどちらが勝った?
A3:2021年4月15日、東京地裁は立花氏が代表を務める党と会社の請求をすべて棄却しました。立花氏側は控訴せず、裁判は終結しました。
Q4:マツコは立花孝志に謝罪した?
A4:マツコが正式に謝罪したという確かな記録はありません。判決翌日の2021年4月16日には、立花氏がマツコ個人への攻撃と受け取られたことについて謝罪する趣旨の発言をしています。
Q5:2026年現在、マツコと立花孝志はどうしている?
A5:マツコは2026年9月にも『5時に夢中!』に出演しています。一方、立花氏は別件の名誉毀損事件で起訴され、10月時点でも勾留が続いていると報じられています。
Q6:マツコに対する損害賠償請求はいくらだった?
A6:合計8万3,000円です。党への請求が1,000円、被害者の会株式会社への請求が8万2,000円でした。東京地裁は両方の請求を棄却しています。
立花孝志氏とマツコ・デラックスの騒動は、2019年の『5時に夢中!』での発言から始まり、TOKYO MX前での抗議活動、出演要求、損害賠償請求訴訟へと発展した。
最終的な要点は次の5つだ。
1. 発端は2019年7月29日のマツコによるN国党へのコメント。
2. 立花氏は有権者への侮辱だとしてTOKYO MX前で抗議活動を展開した。
3. 立花氏側はマツコとTOKYO MXに合計8万3,000円の損害賠償を請求した。
4. 2021年4月15日、東京地裁は原告側の請求をすべて棄却した。
5. 2026年現在、マツコは番組出演を続け、立花氏は別件の刑事事件で勾留されている。
この騒動の本質は、単純な芸能人と政治家の口論ではない。
政治的な意見をテレビで発信する自由と、その発言によって政党や有権者の名誉が傷つけられたと感じた場合の法的責任が、正面から争われた事例だった。
東京地裁の判断も、マツコの発言が政党の社会的評価を低下させる可能性を認めながら、公共性や公益目的、意見・論評の範囲などを踏まえて違法性を否定したものだ。
そのため、この判決を「テレビ出演者なら何を発言しても許される」という意味に解釈するのは適切ではない。
同時に、政治家や政党への批判を、支持者全員への名誉毀損と直ちに結び付けることもできない。
2019年の騒動を正しく理解する鍵は、発言の印象と裁判所が認定した法的責任を区別することにある。 2026年になった現在も、この事件は政治とテレビ報道、そして表現の自由を考えるうえで興味深い事例として振り返る価値がある。
記事の情報基準日:2026年11月5日