仕事のやる気を取り戻すために、いきなり大きな目標を設定する必要はない。むしろ、意欲が低下しているときほど、小さな行動から始めるほうが負担を抑えやすい。
ジェイックの2026年調査では、前向きに仕事へ取り組もうと思えるきっかけとして、「自分自身で気持ちを整理すること」が46.2%で最多だった。「上司からの声掛け」は35.0%、「先輩からの声掛け」は29.9%となっている。
この結果からも、本人による気持ちの整理と、周囲からのサポートの両方が回復のきっかけになることが分かる。具体的な方法を紹介する。
1.やる気が出ない原因を紙に書き出す最初に試したいのは、今の不満やストレスを言葉にすることだ。
頭の中だけで考えていると、仕事に関する悩みが漠然と大きくなりやすい。「上司が苦手」「仕事量が多い」「評価に納得できない」「失敗が怖い」など、具体的な問題に分解すると、何を変えればよいのかが見えてくる。
書き出した内容は、次の3つに分類すると整理しやすい。
- 自分で変えられること:仕事の進め方、時間管理、確認方法など。
- 周囲に相談できること:業務量、担当範囲、指導方法、評価基準など。
- 自分では変えにくいこと:会社の経営方針、上司の性格、組織全体の体質など。
すべてを自分の努力で解決しようとしないことがポイントだ。
2.仕事の目標を小さく設定するやる気が出ないときに「今日は全部終わらせる」「もっと成果を出す」と考えると、それだけで心理的な負担が増えてしまう。
まずはメールを3件返す、資料の見出しだけ作る、10分だけ作業するといった小さな目標を設定してみたい。
作業を細かく分けることで、何から始めればよいか分からない状態を解消しやすくなる。小さな達成感を積み重ねることが、仕事への抵抗感を和らげるきっかけになる。
3.睡眠と休息を優先する睡眠不足や慢性的な疲労が原因の場合、モチベーションを高めようとするよりも、身体を回復させることが先決だ。
就寝前のスマートフォン利用を控える、休日に仕事の連絡を確認しない、短時間でも外に出て身体を動かすなど、生活リズムを整えることから始めたい。
疲労が強い場合は、休日を単なる用事の消化に使わず、何もしない時間を確保することも大切だ。休息を取っても疲労が改善しない場合は、医療機関への相談を検討する。
4.上司や先輩に具体的なサポートを求める仕事の悩みを一人で抱え込むと、問題の解決策が見えなくなることがある。
ジェイックの調査で、落ち込んだときに上司や先輩へ求めるサポートとして最も多かったのは「課題解決のアドバイス」で24.8%だった。次いで「励ましや承認の言葉」が18.8%、「気軽に相談できる機会」が15.4%となっている。
相談するときは、単に「仕事がつらい」と伝えるだけでなく、具体的な希望を伝えると話が進みやすい。
「現在の業務量が多く、優先順位を決められずに困っています。今週取り組むべき仕事を一緒に整理していただけないでしょうか」
あるいは、ミスが続いているなら、次のように相談する方法もある。
「最近、確認不足によるミスが続いています。再発防止のために、業務の進め方やチェック方法についてアドバイスをいただきたいです」
相談する相手は直属の上司に限らない。話しやすい先輩、同僚、人事担当者、産業医など、自分が安心して話せる相手を選んでよい。
5.仕事内容や働き方を見直す仕事内容そのものが原因なら、気分転換だけでは根本的な解決にならない。
例えば、単純作業が多くて成長を感じられない場合は、新しい業務への挑戦を希望する。残業が多い場合は、業務の優先順位や分担を見直してもらう。人間関係に問題がある場合は、配置変更や部署異動を相談する方法もある。
今の職場に残ることだけを前提にせず、働き方を変える選択肢を考えることが重要だ。
6.有給休暇を利用して仕事から離れる疲労が蓄積している場合、数日間仕事から離れることで、自分の状態を客観的に考えられることがある。
特に、休日も仕事のことが頭から離れない、朝から強い疲労感がある、集中力が落ちているといった状態なら、休息を優先する価値がある。
有給休暇を取得することは、仕事を放棄することではない。長く働き続けるための健康管理の一つだ。
7.仕事以外の楽しみや人間関係を取り戻す生活の中心が仕事だけになると、仕事で嫌なことがあったときに気持ちを切り替えにくくなる。
趣味、運動、友人との食事、旅行、家族との時間など、仕事とは関係のない楽しみを意識的に確保したい。
仕事以外にも自分の居場所や達成感を得られる環境があれば、仕事での失敗を必要以上に大きく捉えずに済むこともある。
【休むべき?相談すべき?】仕事を休む判断基準と危険なサイン

仕事のやる気が出ないとき、最も迷いやすいのが「休んでもよいのか」という問題だ。周囲に迷惑をかけたくない、仕事を休むと評価が下がるのではないかという不安から、無理をして出勤する人もいる。
しかし、心身の不調が出ている場合は、仕事を続けることよりも健康を守ることを優先したい。
仕事を休むことを検討したい5つのサイン次のような変化が見られる場合は、無理に出勤するのではなく、休養や専門家への相談を検討したい。
- 睡眠に問題がある:眠れない、夜中に何度も目が覚める、朝早く目覚めてしまう。
- 食欲が落ちている:食事を取る気になれない、体重が減ってきた。
- 気分の落ち込みが続く:理由もなく悲しくなる、不安や焦りが強い。
- 集中力が低下している:簡単な仕事でもミスが増え、業務に支障が出ている。
- 日常生活に影響がある:人と会いたくない、身の回りのことができない、休日も回復しない。
厚生労働省の働く人向けポータルサイト「こころの耳」では、無力感や意欲低下、食欲の変化、睡眠障害、周囲との交流を避ける行動などをストレスサインとして紹介している。
また、こうした心身の不調が2週間以上続く場合には、うつ状態の可能性も考えられるとして、精神科や心療内科などの専門家への早めの相談を勧めている。2週間という期間は診断を確定する基準ではなく、相談を先延ばしにしないための目安として受け止めたい。症状が強い場合は、期間にかかわらず相談してよい。
仕事を休むかどうかの判断基準休むべきか迷ったときは、次の3つの観点で考えると判断しやすい。
① 今日、安全に仕事ができる状態か。
強い眠気や集中力低下、体調不良によって業務上の安全を確保できないなら、出勤を無理に続けないことが大切だ。運転や機械操作など、ミスが重大な事故につながる仕事では特に慎重に判断したい。
② 仕事以外の日常生活にも影響が出ているか。
食事、睡眠、入浴、家事など、普段できていたことが難しくなっている場合は、単なる仕事への意欲低下として扱わないほうがよい。
③ 休息を取っても回復しない状態か。
休日に休んでも疲れが抜けない、出勤日が近づくと体調が悪くなるといった状態が続く場合は、医療機関や産業医への相談を検討したい。
特に強い抑うつ感や、自分を傷つけたい気持ちがある場合は、仕事の調整よりも安全の確保と専門的な支援を優先する必要がある。
休職を検討する場合に確認したいこと有給休暇を使っても回復しない場合や、医師から休養が必要と判断された場合は、休職という選択肢もある。
休職を検討するときは、会社の就業規則で次の点を確認したい。
- 休職できる条件と必要な書類
- 休職期間の上限
- 休職中の給与や社会保険料の取り扱い
- 復職時に必要な手続きや診断書
- 休職期間満了時の取り扱い
また、健康保険の加入条件などを満たせば、病気やけがで仕事を休む際に傷病手当金を受け取れる場合がある。支給条件や金額、期間は個別の状況によって異なるため、加入している健康保険や会社の担当窓口に確認したい。
厚生労働省の「こころの耳」でも、仕事のストレスが大きく、体調に影響が出ている場合には、健康を優先し、人事担当者や産業医、産業保健スタッフに相談する方法が紹介されている。
会社に相談しにくいときの窓口上司に相談しても理解してもらえない場合や、職場の人間関係そのものがストレスの原因になっている場合は、社外の相談先を利用する方法がある。
厚生労働省が運営する「こころの耳」では、働く人のメンタルヘルスに関する情報提供のほか、電話・メール・SNSによる無料相談窓口を案内している。
会社の中だけで問題を解決しようとせず、第三者の視点を取り入れることも選択肢にしたい。
【仕事を辞めたいとき】転職を考えるタイミングと判断基準
仕事のやる気が出ない状態が長く続くと、「もう会社を辞めたほうがいいのではないか」と考えるようになる。
ただし、一時的な疲労や失敗による落ち込みと、職場環境そのものが自分に合っていない状態は分けて考える必要がある。勢いで退職を決めるのではなく、現在の問題が改善できるか、別の環境なら解決するのかを整理したい。
ジェイック調査では約半数が1年未満で転職を検討ジェイックの2026年調査では、モチベーションが低い状態が続いた場合、いつ転職を考えるかについても質問している。
回答で最も多かったのは「1年以上続けば考える」の28.2%だった。一方、「すぐ考える」は9.4%、「3か月程度続けば考える」は18.8%、「半年~1年程度続けば考える」は20.5%だった。
この3つを合わせると48.7%となり、約半数が1年未満の段階で転職を検討する意向を示している。仕事の意欲低下が、若手社員にとってキャリアを見直すきっかけになっていることがうかがえる。
ただし、この数字は転職を実際にした人の割合ではない。また、117人の回答者はジェイックの就職支援サービス利用者に限られている。全ての20代正社員に当てはまる転職基準ではない点には注意したい。
転職を前向きに検討したい5つの状況次のような状態に当てはまる場合は、転職を含めて働く環境を見直す価値がある。
1.職場の人間関係が改善する見込みがない
上司によるハラスメントや継続的な嫌がらせ、職場での孤立などが続いている場合、本人の努力だけで改善することは難しい。相談しても会社が適切に対応しないなら、別の環境を探すことも考えたい。
2.仕事を頑張っても待遇が改善されない
成果に見合った評価がない、昇給の見通しがない、責任だけが増えて給与が変わらないといった状態が続いているなら、他社の待遇と比較する意味がある。
3.成長やキャリアアップの機会がない
専門性を高めたいのに単純作業ばかり任される、希望する部署への異動が難しい、将来のキャリアが見えない場合は、転職によって可能性が広がることもある。
4.仕事内容と自分の適性が大きく異なる
仕事を覚える努力を続けても強い苦痛が残るなら、仕事内容そのものが合っていない可能性がある。職種や業界を変えることで、得意分野を生かせる場合もある。
5.心身の健康に悪影響が出ている
仕事のストレスによって体調を崩している場合、健康を犠牲にしてまで働き続ける必要はない。まず休養や治療を優先し、その後に退職や転職を検討する方法もある。
退職を決める前に確認したい3つの選択肢今の会社が嫌だからといって、必ずしもすぐに退職する必要はない。問題の種類によっては、別の方法で解決できることもある。
- 社内異動:仕事内容や人間関係が原因なら、部署を変えることで改善する可能性がある。
- 休職・休暇:疲労や心身の不調が強い場合は、回復する時間を確保してから今後を考える。
- 転職活動:待遇やキャリア、職場環境に根本的な問題がある場合は、他社の求人や労働条件を比較する。
転職活動を始めることと、今すぐ会社を辞めることは別だ。求人情報を確認し、自分の経験やスキルがどのように評価されるのかを知るだけでも、選択肢は広がる。
転職先選びで失敗しないための確認項目現在の職場への不満だけで転職先を選ぶと、同じ問題を繰り返す可能性がある。応募先を検討するときは、次の条件を確認したい。
- 残業時間や休日出勤の実態
- 給与と賞与、昇給制度
- 評価基準とフィードバックの仕組み
- 上司との面談や相談の機会
- 教育制度やキャリアアップの可能性
- 仕事内容と自分の適性の一致
- 有給休暇や休職制度の利用状況
特に重要なのは、求人票の条件だけでなく、入社後の働き方を具体的に確認することだ。給与が高くても長時間労働が常態化していれば、今抱えている疲労やストレスが解消されない可能性がある。
転職は、今の職場から逃げるためだけの手段ではない。自分が無理なく能力を発揮できる環境を選ぶためのキャリア上の選択肢として考えたい。
【仕事のやる気が出ないとき】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:仕事のやる気が出ないのは甘えや怠けなのでしょうか?
A1:必ずしも甘えや怠けではない。疲労の蓄積、睡眠不足、職場の人間関係、ミスによる自信喪失、評価への不満など、さまざまな要因が関係している。まずは原因を整理し、心身の不調がある場合は休養や専門家への相談を優先したい。
Q2:仕事に行きたくない朝はどうすればよいですか?
A2:まず体調を確認し、安全に働ける状態かを判断することが大切だ。強い疲労や体調不良があるなら休むことも検討する。出勤できる状態であれば、当日の仕事を小さく分け、優先順位の高い作業から始めると心理的な負担を軽減しやすい。朝のつらさが繰り返される場合は、職場のストレスや睡眠状態を見直したい。
Q3:仕事のやる気が出ない状態が何日続いたら休むべきですか?
A3:一律に何日休めばよいという基準はない。睡眠や食欲の変化、強い疲労、集中力低下などがある場合は、日数にこだわらず相談してよい。厚生労働省の「こころの耳」では、不調が2週間以上続く場合に専門家への相談を勧めているが、症状が強い場合は早めに医療機関を受診したい。
Q4:仕事のモチベーションが低下したら転職したほうがよいですか?
A4:必ずしも転職する必要はない。仕事内容や業務量の調整、部署異動、人間関係の改善などで解決できる場合もある。一方、待遇や評価への不満が改善されず、心身への負担も続いているなら転職を検討する価値がある。まずは求人情報を調べ、現在の会社と比較することから始めたい。
Q5:20代で仕事のやる気が出なくなるのは珍しいことですか?
A5:珍しいことではない。ジェイックの2026年調査では、20代正社員の21.4%が日常業務への意欲を低い状態と回答している。また、マイナビの六月病調査では、20代の27.6%が現在の職場で六月病の状態を経験したと回答した。若い年代でも仕事の意欲低下を経験する人はいる。
「仕事やる気でない」と感じる背景には、単純な疲れだけでなく、失敗による自信喪失、成長実感の不足、人間関係のストレス、給与や評価への不満、慢性的な疲労など、さまざまな問題が隠れている。
2026年9月のジェイック調査では、20代正社員のモチベーション低下の原因として「ミスや失敗」が42.7%で最多だった。一方、前向きになるきっかけでは、自分自身で気持ちを整理することや、上司・先輩からの声掛けが上位となっている。
マイナビの1万8,464人調査でも、六月病を感じた人の疲労感や意欲低下、評価への不満が明らかになった。仕事への意欲は、本人の気持ちだけでなく、職場環境や会社の評価制度にも左右される。
【プロの結論】仕事のやる気を取り戻すために、最初から自分を奮い立たせる必要はない。まずは、何がつらいのかを整理する。疲れているなら休む。失敗で自信を失っているなら具体的な改善策を考える。人間関係や評価制度に問題があるなら、相談や環境変更を検討する。それでも改善が見込めないなら、転職という選択肢を持ってよい。
仕事を続けること自体を目的にするのではなく、自分の健康と生活を守りながら働ける環境を選ぶことが大切だ。今の仕事に意欲が湧かない自分を責めるより、まずはその理由を一つずつ確かめることから始めたい。
仕事へのやる気は、無理やり引き出すものではなく、安心して働ける環境や納得できる仕事の中で少しずつ取り戻していくものだ。
主な参考資料:株式会社ジェイック「20代正社員のモチベーション低下と回復の実態」(2026年9月15日)、株式会社マイナビ「六月病と評価フィードバックに関する調査2026年」(2026年5月26日)、厚生労働省「こころの耳」、世界保健機関(WHO)ICD-11関連資料。