2026年11月現在、ロサンゼルス・ドジャースでプレーする佐々木朗希投手の契約は、メジャーリーグの選手契約制度を理解するうえでも興味深い事例だ。日本で圧倒的な球速と奪三振能力を示したスター投手でありながら、渡米時に結んだのは大型のメジャー契約ではなく、マイナー契約だった。契約金は650万ドル、2026年の年俸は80万ドルとされている。
この金額の差を生んだのが、MLBの「25歳ルール」と国際アマチュアFA制度だ。加えて、ドジャースが佐々木を保有できる期間はサービスタイムによって決まり、通常の制度が続けば2028年に年俸調停、2031年にFA市場へ出る見込みとなる。契約金と年俸の違い、千葉ロッテマリーンズへの譲渡金、2025年の移籍経緯から今後の権利取得まで、2026年時点の情報を整理する。
【契約の核心】佐々木朗希はなぜ大型契約ではなくマイナー契約だったのか

佐々木朗希が2025年1月にドジャースと結んだ契約は、一般的な日本人メジャーリーガーの大型契約とは性質が異なる。最大の理由は、移籍当時の年齢と日本でのプロ経験年数にある。
佐々木は2001年11月3日生まれで、ドジャースとの契約が成立した2025年1月22日時点では23歳だった。日本では千葉ロッテマリーンズで2021年から2024年までプレーしていたが、MLBの外国人プロ選手に対する免除条件を満たしていなかった。
MLBでは、25歳未満で海外のプロリーグにおける経験が6シーズン未満の選手は、国際アマチュアFAとして扱われる。この区分に該当すると、契約金や契約形態に制限が設けられ、通常のメジャー契約を自由に結ぶことができない。
つまり、佐々木のマイナー契約は、ドジャースが実力を低く評価した結果ではない。選手の年齢とプロ経験に基づくMLBの制度上の制約だった。
マイナー契約でもメジャーで活躍できるここで注意したいのが、マイナー契約とマイナーリーグでのプレーは同じ意味ではないという点だ。
佐々木は契約直後、メジャーの40人枠には登録されておらず、招待選手として春季キャンプに参加した。しかし、2025年3月17日にドジャースの40人枠へ登録され、同月19日には東京ドームでシカゴ・カブスを相手にメジャーデビューを果たしている。
契約上はマイナー契約からのスタートでも、球団が実力を認めてメジャー昇格させれば、メジャーの試合に出場できる。実際、佐々木はマイナーリーグで長期間経験を積んでから昇格したわけではない。
この経緯からも、マイナー契約という言葉だけで選手の評価や球団内での期待値を判断するのは適切ではない。契約の分類と実際の起用方針は、分けて考える必要がある。
【25歳ルールの仕組み】国際アマチュアFA制度が契約金を制限する理由
佐々木の契約を理解するために欠かせないのが、MLBの国際アマチュアFA制度だ。
MLBでは、海外の若い選手を獲得する際、各球団に国際ボーナスプールという契約金の予算枠が設定されている。球団はこの枠内で国際アマチュア選手と契約しなければならず、通常のFA市場のように資金力だけで無制限に契約金を引き上げることはできない。
25歳ルールの具体的な条件一般に「25歳ルール」と呼ばれる仕組みでは、外国のプロリーグでプレーする選手が、MLBの国際ボーナスプール制限から免除されるには、原則として次の2条件を両方満たす必要がある。
- MLBの契約基準上、25歳以上であること。
- MLBが認める外国のプロリーグで、少なくとも6シーズンのプロ経験があること。
どちらか一方でも満たさなければ、国際アマチュアFAとして扱われる可能性がある。佐々木は契約時点で23歳、海外プロ経験も6シーズン未満だったため、この制限の対象になった。
なお、2026年11月3日に25歳の誕生日を迎えたことによって、2025年に締結した契約が自動的に大型メジャー契約へ変更されるわけではない。契約時の資格区分と、その後のメジャーリーグでの保有権・年俸制度は別の問題である。
ドジャースのボーナスプールと650万ドルの関係2025年の国際ボーナスプールで、ドジャースに当初割り当てられていた金額は514万6200ドルだった。ところが、佐々木の契約金として報じられた650万ドルは、この当初の枠を上回っている。
そこでドジャースは、他球団とのトレードを通じて国際ボーナスプールの追加枠を獲得した。米CBSスポーツなどの報道によると、フィリーズやレッズとの取引で追加資金枠を確保し、佐々木との契約を成立させた。
この動きは、ドジャースが佐々木の獲得を優先し、限られた国際選手獲得予算を組み替えたことを示している。単に契約金を支払ったというだけではなく、球団の若手選手獲得戦略にも影響する契約だった。
MLB公式の国際アマチュアFA制度の説明でも、ボーナスプールの金額は球団ごとに設定され、一定の条件でトレードによる枠の移動が認められている。
【契約金と年俸の実態】650万ドルと2026年80万ドルは何が違う?
佐々木朗希の契約で混同されやすいのが、契約金650万ドルと2026年の年俸80万ドルだ。
契約金は契約成立時に支払われるサインボーナスであり、年俸はメジャーリーグでプレーする各シーズンに対して支払われる基本報酬だ。両者は別の項目であり、650万ドルが毎年支給されるわけではない。
2025年から2026年までの年俸推移| 年度 | 所属・区分 | 年俸・契約金 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 2025年 | ドジャース | 76万ドル | メジャー1年目の基本年俸 |
| 2025年 | 契約時 | 650万ドル | サインボーナス |
| 2026年 | ドジャース | 80万ドル | メジャー2年目の基本年俸 |
| 2027年 | ドジャース | 未確定 | 年俸調停前の期間 |
| 2028年 | ドジャース | 未確定 | 通常の制度では年俸調停の初年度 |
| 2029年 | ドジャース | 未確定 | 年俸調停の2年目の見込み |
| 2030年 | ドジャース | 未確定 | 年俸調停の3年目の見込み |
| 2031年 | FA市場 | 未確定 | 通常の制度ではFA資格取得後のシーズン |
2025年の基本年俸は76万ドル、2026年は80万ドルとされている。2026年のMLB最低年俸は78万ドルであり、佐々木の80万ドルはそれをわずかに上回る水準だ。
したがって、2026年に80万ドルを受け取っているという情報は、契約金650万ドルとは別に理解しなければならない。基本年俸だけを見れば、メジャーのスター選手としては非常に低い水準にとどまっている。
契約金650万ドルは大型契約なのか650万ドルという金額は、国際アマチュア選手の契約金としては大きな数字だ。2025年の国際FA市場でも、佐々木の契約金は高額な部類に入った。
しかし、一般的なメジャーFA選手の大型契約とは比較の仕方が異なる。例えば、同じドジャースに所属する山本由伸は、2023年オフに12年総額3億2500万ドルの契約を結んだ。山本は佐々木と異なり、契約時点で25歳以上かつ日本でのプロ経験が6シーズン以上あり、国際ボーナスプールの制限対象ではなかった。
つまり、佐々木と山本の契約額の違いは、実力だけで決まったものではない。移籍時の年齢、プロ経験、契約制度、交渉できる市場の違いが大きく影響している。
千葉ロッテマリーンズへの譲渡金はいくら?佐々木は千葉ロッテマリーンズからポスティングシステムを利用してドジャースへ移籍した。そのため、ドジャースは契約に伴う譲渡金をロッテに支払う仕組みになっている。
マイナー契約の場合、譲渡金は契約金の25%が基準となる。650万ドルの25%を計算すると、162万5000ドルだ。
当時の為替水準では約2億5000万円前後に相当する。山本由伸のような大型メジャー契約に伴う譲渡金と比べると小さいが、これは佐々木の契約形態がマイナー契約だったことによる制度上の違いだ。
ここで重要なのは、650万ドル全額がロッテに支払われるわけではないという点である。契約金は佐々木本人への報酬であり、譲渡金はMLB球団から旧所属球団へ支払われる別の金銭だ。
【2025年の契約経緯】佐々木朗希・ドジャース・ロッテの関係を時系列で整理
佐々木のMLB移籍は、単純な海外FA移籍ではなかった。ロッテによるポスティング容認、国際FA市場の解禁、ドジャースとの交渉、契約成立、メジャー登録という複数の段階を経て実現した。
関係する人物・球団・制度を整理すると、契約の全体像が見えてくる。
契約をめぐる関係者・制度の相関表| 主体・制度 | 佐々木との関係 | 契約上の役割・意味 |
|---|---|---|
| 佐々木朗希 | 契約当事者 | 23歳で国際アマチュアFAとして渡米 |
| ロサンゼルス・ドジャース | 移籍先球団 | 650万ドルの契約金を提示し、6年間の保有権を得る仕組み |
| 千葉ロッテマリーンズ | 前所属球団 | ポスティングを容認し、譲渡金を受け取る立場 |
| MLB・MLBPA | 制度の管理・交渉主体 | 25歳ルール、サービスタイム、年俸調停などを規定 |
| 国際ボーナスプール | 契約金の制限制度 | ドジャースの当初予算は514万6200ドル |
| ポスティングシステム | 日米球団間の移籍制度 | 旧所属球団への譲渡金と交渉期間を定める |
2024年11月:千葉ロッテマリーンズが佐々木のポスティングによるMLB移籍を容認した。佐々木は日本でのキャリアを経て、23歳でメジャーリーグ挑戦へ進むことになった。
2025年1月17日(日本時間18日):佐々木が自身のSNSでドジャースとマイナー契約を結ぶことを発表した。契約金650万ドルという報道もこの時期に広がった。
2025年1月22日:ドジャースが正式な契約成立を発表。MLB公式記事でも、25歳未満の国際アマチュアFAとして扱われること、2025年は新人水準の年俸になること、契約金650万ドルが報じられたことが説明されている。
2025年1月下旬:佐々木はメジャーキャンプへの招待選手として参加することになった。この段階では40人枠に入っておらず、マイナー契約の選手として登録されていた。
2025年3月17日:ドジャースが佐々木を40人枠に登録した。開幕ロースター入りに向けた手続きが進み、メジャーでのプレーが現実のものとなった。
2025年3月19日:東京ドームで行われたカブス戦でメジャーデビュー。日本でのキャリアを経て、MLBの公式戦に初登板した。
この時系列から分かるのは、2025年1月のマイナー契約と3月のメジャー昇格は矛盾しないということだ。契約の入口はマイナーでも、40人枠への登録によってメジャーリーガーとしてのキャリアをスタートできる。
【ドジャースの保有期間】サービスタイムから見る2028年の年俸調停と2031年FA
佐々木の契約を長期的に考えるうえで、契約金や年俸以上に重要なのが「サービスタイム」だ。
MLBでは、選手がメジャーの登録枠に入っている日数などを基準に、年俸調停やFAの権利取得時期を決める。球団が選手を何年保有できるかも、この制度によって左右される。
MLBサービスタイムの仕組みMLBのレギュラーシーズンは原則187日間で構成され、26人枠に登録されている日やメジャーの負傷者リストに登録されている日がサービスタイムとして加算される。
1シーズンで172日以上を記録すると、サービスタイム1年として扱われる。つまり、試合に出場した日数だけで計算する制度ではない。
この仕組みでは、故障によって負傷者リストに入っている期間も、メジャーの登録資格を維持していればサービスタイムに含まれる。一方、マイナーリーグに降格してメジャー登録から外れている期間は、原則として加算されない。
MLB公式のサービスタイム解説によると、通常の年俸調停資格は3年以上6年未満、FA資格は6年以上のメジャー経験が基本となる。また、2年以上3年未満でも、一定の条件を満たす上位22%の選手はSuper Twoとして早期に年俸調停の対象になる。
2026年終了時点で佐々木のサービスタイムは2.000年2026年11月5日時点の公開取引記録を基にしたサービスタイム集計では、佐々木は2025年に172日、2026年にも172日のメジャー登録日数を記録し、合計2.000年とされている。
この2年間の積み上げが、今後の権利取得を考える出発点になる。なお、サービスタイムの個別集計はMLBが公式に公表する確定値ではなく、公開されたロースターの移動履歴から算出されたものだ。
2028年に年俸調停、2031年にFAとなる見込み2026年終了時点で2.000年という前提で、2027年も通常どおり1年分のサービスタイムを積み上げれば、通算3.000年に達する。
その場合、2028年シーズンから年俸調停の対象となる。さらに2028年、2029年、2030年とメジャーでの経験を積み、通算6年に達すれば、2030年シーズン終了後にFA資格を取得する見込みだ。
- 2025年:サービスタイム1.000年。
- 2026年:サービスタイム2.000年。
- 2027年:通常どおりフルシーズンを積めば3.000年。
- 2028年:年俸調停の初年度となる見込み。
- 2029年:年俸調停の2年目となる見込み。
- 2030年:年俸調停の3年目となる見込み。
- 2031年:FA市場に出る見込み。
年俸調停とは、球団と選手が翌シーズンの年俸について交渉し、合意できない場合には第三者の判断を仰ぐ制度だ。成績や実績に応じて、年俸が大きく上昇する可能性がある。
ただし、年俸調停の対象になったからといって、必ず正式な調停審理に進むわけではない。球団と選手が事前交渉で合意するケースもある。
また、2031年のFAという表現は、2031年のシーズン終了後に初めて自由契約になるという意味ではない。通常の制度であれば2030年シーズン終了後に6年の保有期間を満たし、2031年の市場で他球団との契約交渉が可能になるという意味だ。
ドジャースが2030年まで保有権を持つという見通しも、佐々木が同球団に在籍し、サービスタイムが想定どおり積み上がることを前提とする。トレードが成立すれば、残りの保有権が移籍先球団に引き継がれる可能性もある。
【プロの結論】2026年以降の契約見通しと、知っておきたい3つの判断基準
佐々木朗希の契約は、単純に年俸80万ドルという数字だけで評価すると本質を見誤る。注目すべきなのは、23歳という早い段階でMLBに挑戦したことと、その結果として長い球団保有期間が設定されたことだ。
1.大型契約を待つより早期のMLB挑戦を選んだ構図佐々木が2025年に移籍したことで、年齢と経験年数の条件から国際アマチュアFAとして扱われた。仮に25歳以上かつ6シーズン以上の海外プロ経験を満たすまで待っていれば、国際ボーナスプールによる制約を受けず、メジャー契約を交渉できた可能性がある。
MLB公式の契約報道でも、2年待っていれば山本由伸のような大型契約に近い条件を得られる可能性があったと説明されている。ただし、将来の契約額や市場価値は成績、健康状態、球団の需要によって変わるため、実際に同規模の契約を得られたと断定することはできない。
佐々木の選択は、将来の契約金額だけでなく、より早い段階でメジャーの環境に身を置くことを優先した選択として捉えられる。
2.2028年の年俸調停は収入面の大きな転換点2026年の80万ドルという年俸は、メジャーでの実績を十分に反映した大型報酬とはいえない。しかし、2028年から年俸調停の対象になれば、球団との交渉によって報酬を引き上げる機会が生まれる。
佐々木にとって重要なのは、単年度の勝敗だけでなく、先発投手としての稼働実績、投球回数、奪三振、故障からの回復、チームへの貢献度などを積み上げることだ。こうした要素は年俸調停における評価にも関係する。
3.2026年11月はMLBの労使交渉にも注目2026年11月5日現在、MLBとMLB選手会の現行労使協定は12月1日に期限を迎える予定で、次期協定をめぐる交渉が続いている。
11月4日にMLBが公表した最新提案では、年俸総額の上限・下限制度を2028年から導入する案に加え、30歳以上の選手についてFA取得までの保有期間を5年に短縮する案や、最低年俸の引き上げなどが示された。
ただし、これらは交渉段階の提案であり、確定した新ルールではない。30歳以上を対象とするFA前倒し案については、2026年に25歳になった佐々木は直接の対象にならない見込みだが、次期協定でサービスタイムや年俸調停制度が変更されれば、将来の権利取得スケジュールに影響する可能性はある。
したがって、2028年の年俸調停と2031年のFAは、現行制度を前提にした有力な見通しとして理解するのが適切だ。
契約を見るときに間違えやすいポイント- 契約金と年俸を混同しない:650万ドルは契約時のサインボーナスであり、2026年の年俸80万ドルとは別の報酬。
- マイナー契約を実力評価と結び付けない:25歳ルールによる制度上の分類であり、メジャーでの起用を禁止するものではない。
- FAの年を確定事項として扱わない:サービスタイムの積み上げや次期労使協定によって変更される可能性がある。
契約を正しく理解するには、報道される契約金だけでなく、契約形態、サービスタイム、球団保有権、年俸調停の4つを一緒に見ることが欠かせない。
【佐々木朗希の契約に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:佐々木朗希がドジャースとマイナー契約を結んだ理由は?
A1:契約当時23歳で、海外プロリーグでの経験も6シーズン未満だったため、MLBの25歳ルールに該当したからだ。国際アマチュアFAとして扱われ、国際ボーナスプールの制限を受けるマイナー契約となった。
Q2:佐々木朗希の2026年の年俸はいくら?
A2:2026年の基本年俸は80万ドルとされている。2025年の76万ドルから増加しているが、契約金650万ドルとは別の金額だ。
Q3:佐々木朗希はいつ年俸調停とFAの権利を取得する?
A3:2026年終了時点でサービスタイム2.000年という集計を前提に、2027年に3年目を積み上げれば、2028年から年俸調停の対象になる見込みだ。通常の制度が続き、2030年までに6年のサービスタイムを満たせば、2031年のFA市場に出ることになる。
佐々木朗希のドジャース契約は、25歳ルールと国際アマチュアFA制度によって、通常の大型メジャー契約とは異なる形で成立した。契約金650万ドルは大きな金額だが、2026年の基本年俸は80万ドル。契約金と年俸を分けて考えることが、契約の実態を理解する第一歩になる。
千葉ロッテマリーンズへの譲渡金は契約金の25%に当たる162万5000ドルが基準となり、ドジャースはサービスタイムに基づいて原則2030年まで保有権を持つ見込みだ。通常の制度を前提とすれば、2028年に年俸調停、2031年にFAという流れになる。
今後の最大の注目点は、佐々木がメジャーでどれだけ安定した実績を残し、年俸調停を通じて市場価値を高められるかだ。2026年11月にはMLBの次期労使協定をめぐる交渉も進んでおり、制度変更にも目を向ける必要がある。
佐々木の契約は、単に安い年俸でドジャースに加入したという話ではない。若くして世界最高峰の舞台に挑戦するため、初期の報酬と長期的な保有権のバランスを受け入れた契約である。その選択が将来どれほどの価値を生むのか、2028年の年俸調停と2031年のFA市場が大きな節目になる。