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親の介護をしたくないのは無責任?法律上の義務と施設・支援制度を2026年最新解説

橘 圭 橘 圭 • 更新: • 公開: • 読了約 29 分
目次

「親の介護をしたくない」「自分の人生を犠牲にしてまで親の面倒を見たくない」。そう感じることに、罪悪感を抱いていないでしょうか。親との関係が悪い、過去に虐待や精神的な苦痛を受けた、仕事や子育てで余裕がない、介護費用を負担できないなど、親の介護を避けたい理由は人によって異なります。しかし、親子だからといって、子どもが必ず同居し、仕事を辞め、身の回りの世話をすべて引き受けなければならないわけではありません。

2026年11月現在、民法877条は親子や兄弟姉妹の扶養義務を定めていますが、扶養義務と自分自身が直接介護をする義務は同じではありません。介護保険サービス、地域包括支援センター、老人ホーム、介護休業制度などを活用すれば、親の生活を支えながら自分の生活を守る選択肢があります。法律上の責任、親子関係、経済的な負担、2025年改正の介護支援制度を整理します。

【親の介護をしたくないのは無責任?拒否したい理由と実際の割合】

親介護したくない
親の介護をしたくないと思うのは自然な感情

親の介護をしたくないと考えること自体は、無責任でも冷酷でもありません。介護は、数週間で終わるとは限らず、何年にもわたって生活の時間、体力、経済力を必要とする場合があります。

特に、次のような事情を抱えている人にとって、親の介護は大きな心理的負担になります。

  • 親子関係が悪い:幼少期からの暴言、暴力、過干渉、精神的支配などがあり、親と関わること自体が苦痛。
  • 自分の生活を守りたい:仕事、育児、家事、自分自身の健康を維持するだけで精いっぱい。
  • 経済的な余裕がない:介護費用や交通費、施設利用料を負担できない。
  • 身体的な介護に抵抗がある:入浴、排泄、食事、着替えなどの介助に精神的な抵抗を感じる。
  • 兄弟姉妹の協力が期待できない:自分だけに介護負担が集中することを恐れている。
  • 介護の先が見えない:認知症や身体機能の低下が進み、いつまで続くのか分からないことに不安がある。

これらは単なるわがままではなく、介護によって自分自身の生活が崩れることへの現実的な不安でもあります。

2026年の調査では、介護のための同居を望まない子世代が約6割

2026年3月12日、LIFULL seniorが運営する「LIFULL 介護」は、親世代と子世代を対象とした「同居介護に関する意識調査」を公表しました。

調査期間は2026年3月2日から4日。子と別居している50代以上の親世代536人と、別居している親がいる30〜40代の子世代545人を対象にしたインターネット調査です。

将来、介護のために親子で同居したいかという質問に対して、次の結果が示されました。

  • 子世代:「同居したくない」30.1%、「できれば同居したくない」31.7%。合計61.8%。
  • 親世代:「同居したくない」43.5%、「できれば同居したくない」35.6%。合計79.1%。

つまり、介護を理由とした親子の同居については、子世代の約6割、親世代の約8割が消極的な意向を示しています。

同調査では、同居を望まない子世代の理由として「介護によるストレスが増えそうだから」が52.8%で最多でした。「仕事や育児と介護の両立ができないから」も37.8%に上っています。

一方、親世代では「子に介護の負担をかけたくないから」が84.1%で最多でした。親子の双方が、同居介護による精神的・生活上の負担を懸念していることが分かります。

ただし、この61.8%という数字は、親の介護そのものを拒否する人の割合ではありません。あくまで介護のための同居を望まない子世代の割合です。「親の介護をしたくない人は全国で約6割」と読み替えることはできません。

それでも、介護を理由に親子が同居することを当然視しない考え方が広がっていることを示す調査結果です。

親を大切に思うことと、自分の家に引き取って介護することは別です。親孝行の方法は同居や直接介護だけではありません。

【民法877条の扶養義務とは?親の介護を拒否できる法律上の境界】

民法877条は親子の扶養義務を定めている

親の介護を考えるとき、最初に理解しておきたいのが民法877条です。

同条第1項では、直系血族及び兄弟姉妹が互いに扶養する義務を負うと定めています。親と子は直系血族に当たるため、成人した子どもも親に対して法律上の扶養義務を負う可能性があります。

ここで重要なのは、法律が定めているのは扶養する義務であり、子どもが必ず自分で身体介護をしなければならないという義務ではないことです。

扶養とは、生活を維持するために必要な援助を行うことを意味します。具体的には、経済的な援助などが問題になりますが、実際の内容は当事者の事情によって異なります。

民法878条・879条で扶養の順序や程度が決まる

兄弟姉妹が複数いる場合、誰がどの程度の扶養をするのかという問題も生じます。

民法878条は扶養義務者が複数いる場合の順位について定め、協議がまとまらない場合などには家庭裁判所が判断します。

加えて、民法879条では、扶養の程度や方法について協議が調わない場合、家庭裁判所が扶養を受ける人の需要、扶養する人の資力、その他一切の事情を考慮して決定するとしています。

したがって、親の介護費用を子どもが必ず全額負担する、長男や長女が必ず介護を引き受ける、という一律の決まりはありません。

扶養義務と直接介護義務の違い

混同されやすい法律上のポイントを整理すると、次のようになります。

  • 親と同居して介護することが、民法877条によって一律に義務付けられているわけではない。
  • 仕事を辞めて親の介護に専念する義務が、同条から当然に生じるわけではない。
  • 入浴、排泄、食事などの身体介護を特定の子どもが必ず担当するという規定ではない。
  • 経済的な扶養については、親の生活状況や子どもの収入・資産などに応じて具体的な問題が生じる場合がある。

つまり、親の介護を直接引き受けないという選択と、法律上の扶養義務が存在するかどうかは分けて考える必要があります。

親と絶縁していても扶養義務はなくならない?

親と長年連絡を取っていない、親から虐待を受けていた、経済的な援助を受けられずに育ったなど、親子関係が深刻に悪化しているケースもあります。

民法877条は親子という法律上の関係を基礎にしているため、単に絶縁した、連絡を取っていないという事情だけで、扶養義務が自動的に消滅するわけではありません。

一方、民法879条は扶養を受ける側の需要だけでなく、扶養する側の資力やその他一切の事情を考慮する仕組みです。

そのため、虐待の経歴、長期間の関係断絶、自身の生活困窮、病気、子育てなどの事情は、具体的な扶養の程度や方法を検討するうえで重要になります。

親子関係が悪い場合には、無理に直接連絡を取るのではなく、弁護士や自治体の相談窓口を通じて対応する方法もあります。扶養義務の有無や範囲に争いがある場合は、家庭裁判所での調停・審判を含めて検討してください。

なお、親が経済的に困窮して生活保護を必要としている場合も、子どもと事前に相談しなければ申請できないわけではありません。厚生労働省は、扶養義務者の扶養は生活保護の保護要件ではないと説明しています。

【親の介護をしない方法はある?介護保険と相談窓口の活用】

まずは地域包括支援センターに相談する

親の介護を自分だけで引き受けたくない場合、最初に相談したいのが地域包括支援センターです。

地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などの専門職が高齢者や家族を支援する相談機関です。

主な相談内容は次のとおりです。

  • 親の生活状況や認知症についての相談。
  • 介護保険サービスを利用するための手続き。
  • 要介護認定の申請に関する支援。
  • 訪問介護やデイサービスなどの紹介。
  • 施設入居や在宅生活の継続に関する相談。
  • 家族間の介護負担や高齢者虐待などの問題。

厚生労働省によると、2025年4月末時点で全国に5,487か所の地域包括支援センターが設置されており、支所に当たるブランチを含めると7,374か所です。

相談先は親が住んでいる地域を担当するセンターです。親の介護を自分で担当できないこと、仕事や家庭の事情で頻繁に訪問できないことも、そのまま伝えて構いません。

介護保険サービスを利用する条件

介護保険サービスは、原則として次の条件に該当する人が利用できます。

  • 65歳以上:介護や支援が必要な状態で、市区町村から要支援・要介護認定を受けた人。
  • 40〜64歳:医療保険に加入しており、加齢に伴う16種類の特定疾病が原因で要支援・要介護状態になった人。

65歳以上の場合は、特定の病気が原因であることは必須ではありません。日常生活における介護の必要性が認定されることが基本です。

一方、40〜64歳の人は、特定疾病が原因であることが条件になります。単に年齢や生活状況だけで介護保険サービスを利用できるわけではありません。

要介護認定の申請方法と利用開始までの流れ

介護保険サービスを利用するためには、市区町村で要介護認定を受ける必要があります。

  1. 市区町村の窓口に申請する:親が住んでいる自治体の介護保険担当窓口に相談する。地域包括支援センターで申請の相談や支援を受けることもできる。
  2. 認定調査を受ける:市区町村の調査員などが本人の自宅や施設を訪問し、身体状況や日常生活の様子を確認する。
  3. 主治医意見書を作成してもらう:市区町村からの依頼により、主治医が病気や心身の状態について意見書を作成する。
  4. 介護認定審査会で審査する:認定調査の結果や主治医意見書などをもとに、介護の必要度を判定する。
  5. 認定結果を受け取る:要支援1・2、要介護1〜5などの区分が決定される。
  6. ケアプランを作成する:ケアマネジャーなどと相談し、必要なサービスを組み合わせて利用を開始する。

申請時には、介護保険被保険者証などが必要になります。40〜64歳の第2号被保険者については、医療保険の加入状況を確認できる書類も必要です。

本人が手続きに行けない場合は、家族などが自治体や地域包括支援センターに相談し、申請を支援することもできます。

介護を支える関係者と役割の関係

親の介護を子どもだけで担わないためには、家族、行政、介護専門職がそれぞれの役割を分担することが大切です。

関係者・制度 主な役割 家族の負担を減らす仕組み
市区町村 要介護認定、介護保険制度の運営 認定申請や公的サービスの利用を支援
地域包括支援センター 高齢者や家族の総合相談 介護サービス、施設、専門機関につなぐ
ケアマネジャー ケアプランの作成と調整 必要な介護サービスを組み合わせる
訪問介護事業者 食事、入浴、排泄などの介助や生活援助 家族が担っていた日常的な介護を代行
介護施設 施設内での生活支援、身体介護、必要な医療的支援 日常的な介護を専門職に任せられる
兄弟姉妹 家族内での話し合いと協力 費用、手続き、連絡、面会などを分担
勤務先 介護休業や介護休暇などの制度提供 仕事と介護の両立を支援

このように、介護には複数の関係者が関わる仕組みがあります。子どもがすべての業務を引き受ける必要はなく、専門職に任せられる部分を増やすことが現実的な解決策です。

【老人ホームの入居費用はいくら?在宅介護と施設介護を比較】

在宅介護を選ぶ場合のメリットと負担

在宅介護は、親が住み慣れた自宅で生活を続けられる方法です。介護保険を利用すれば、家族がすべての介護を行わなくても生活を支えられます。

代表的なサービスには、次のようなものがあります。

  • 訪問介護:ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行う。
  • デイサービス:日中、施設に通って食事、入浴、機能訓練などを受ける。
  • 訪問看護:看護師などが自宅を訪問し、医療的なケアや療養上の支援を行う。
  • ショートステイ:短期間施設に宿泊し、介護や生活支援を受ける。
  • 福祉用具貸与:介護ベッドや車いすなど、必要な福祉用具を利用する。

在宅介護の利点は、生活環境を変えずに済むことと、サービスを組み合わせて費用や介護内容を調整できることです。

ただし、夜間の見守り、緊急時の対応、通院の付き添い、サービス提供時間外の支援など、家族に負担が残る場合があります。訪問介護だけで24時間の見守りができるわけではないため、ケアマネジャーと必要な支援体制を検討する必要があります。

施設介護を選ぶ場合のメリットと注意点

親の介護を直接引き受けたくない人にとって、老人ホームなどの施設介護は有力な選択肢です。

施設では介護職員や看護職員などが、入居者の生活状況や必要性に応じて介護を提供します。家族が毎日訪問したり、入浴や排泄の介助を担当したりする負担を大きく減らせます。

主な施設の特徴は次のとおりです。

  • 特別養護老人ホーム(特養):常時介護が必要な高齢者の生活施設。新規入所は原則として要介護3以上が対象で、要介護1・2でも特別な事情があれば特例入所が認められる。
  • 介護老人保健施設(老健):医療的管理やリハビリを受けながら、在宅復帰を目指す施設。長期的な終身入居を前提とした施設ではない。
  • 介護医療院:長期的な療養が必要な高齢者に、医療と介護を一体的に提供する施設。
  • 有料老人ホーム:民間事業者などが運営し、生活支援や介護サービスなどを提供する施設。料金体系や入居条件は施設ごとに異なる。

施設によって提供できるサービスや医療対応の範囲は違います。認知症の症状、夜間の介護、医療処置の必要性などを確認して選ぶことが大切です。

老人ホームの入居費用と月額料金の考え方

施設への入居を検討する際には、入居時に支払う費用と毎月の費用を分けて考える必要があります。

介護保険施設では、基本的に次の費用が発生します。

  • 介護サービス費の自己負担分
  • 食費
  • 居住費
  • 日常生活費やその他の実費

介護サービスの利用者負担は原則1割で、65歳以上の一定以上所得者は2割または3割になります。

厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査に関連する資料では、介護保険施設の食費の基準費用額は月額約4万4,000円です。居住費の基準費用額は居室によって異なり、特養の多床室では約2万8,000円、従来型個室では約3万7,000円、ユニット型個室では約6万3,000円が目安となっています。

つまり、食費と居住費だけでも、基準費用額を単純に合算すると月額約7万2,000〜10万7,000円程度になります。ここに介護サービスの自己負担や日常生活費などが加わります。

なお、これは基準費用額を使った目安であり、施設が実際に請求する総額を示すものではありません。

所得や預貯金などの条件を満たす場合には、食費・居住費の負担を軽減する「負担限度額認定(補足給付)」を利用できる可能性があります。自治体への申請が必要なので、入居前に確認してください。

一方、有料老人ホームでは、入居一時金の有無、月額利用料、管理費、食費、介護サービス費などが施設ごとに異なります。入居一時金が不要な施設もあれば、高額な初期費用が必要な施設もあります。契約前には、月額料金に含まれる項目と追加料金を必ず確認しましょう。

在宅介護と施設介護はどちらを選ぶべき?

どちらが優れているかは、親の身体状況だけでなく、本人の希望や家族の生活環境によって変わります。

在宅介護が向いているケース

  • 親が自宅での生活を強く希望している。
  • 訪問介護やデイサービスを組み合わせれば生活を維持できる。
  • 夜間の対応や緊急時の支援体制を確保できる。
  • 家族が無理のない範囲で連絡や手続きを担当できる。

施設介護が向いているケース

  • 24時間の見守りや介護が必要になっている。
  • 認知症の症状が進み、自宅での安全確保が難しい。
  • 家族が遠方に住んでいる、または仕事や育児で対応できない。
  • 家族による介護が心身の限界に達している。
  • 専門的な医療・介護体制が必要になっている。

親を施設に入れることは、親を見捨てることではありません。専門職に生活を支えてもらうことも、親の安全と尊厳を守る方法の一つです。

【兄弟姉妹で介護を分担する方法と毒親・疎遠な親への対応】

兄弟姉妹で介護負担を公平に分ける

親の介護をしたくないと感じる理由の一つが、兄弟姉妹の間で負担に偏りが生じることです。

実家の近くに住んでいる子ども、親と連絡を取りやすい子ども、長男や長女など、特定の人に介護の仕事が集中するケースがあります。

しかし、長男だから、長女だから、独身だから、実家の近くに住んでいるからという理由だけで、すべての介護を担当しなければならないわけではありません。

兄弟姉妹で分担する場合は、直接介護だけでなく、次のように役割を分ける方法があります。

  • 長距離移動が難しい人:電話やオンラインで親の状況を確認する。
  • 実家に近い人:必要な場合に限り、通院や緊急時の対応を担当する。
  • 経済的な余裕がある人:合意した範囲で費用を分担する。
  • 手続きが得意な人:介護保険の申請、施設の資料収集、行政との連絡を担当する。
  • その他の兄弟姉妹:定期的な面会、必要物品の手配、ケアマネジャーとの情報共有などを担当する。

大切なのは、全員が同じ時間だけ介護することではなく、それぞれの収入、健康状態、居住地、家庭環境に合わせて負担を調整することです。

話し合いがまとまらない場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、必要に応じて家庭裁判所の調停なども検討できます。

毒親や虐待を受けた親の介護はどうする?

親の介護問題は、親子関係が良好な家庭だけに生じるものではありません。

幼少期に虐待を受けた人、長年にわたって精神的に支配されてきた人、親から経済的な搾取を受けてきた人にとって、介護は過去の苦痛を再び経験するきっかけになることがあります。

このような場合、無理に親との関係を修復したり、直接介護を引き受けたりすることを最初から目標にする必要はありません。

まずは、次のような対応を検討してください。

  • 親と直接連絡を取らず、自治体や専門職を通じて情報を共有する。
  • 介護サービスや施設入居によって、日常的な介護を専門職に任せる。
  • 親からの金銭的要求や暴言などがある場合は、連絡方法や対応範囲を明確にする。
  • 虐待の経歴や経済的な事情について、弁護士などに相談する。
  • 自分自身の心身の安全を最優先にする。

親子関係が悪いからといって民法877条の扶養義務が自動的になくなるわけではありませんが、過去の虐待や関係断絶などの事情は、具体的な扶養の程度や方法を検討する際に関係する可能性があります。

生活保護の利用が必要な親についても、扶養義務がある子どもに事前に相談しなければ申請できないという制度ではありません。厚生労働省の案内では、DVや虐待などの事情がある場合には、扶養照会を控える取り扱いも示されています。

親の介護を引き受けることが、自分の安全や生活を脅かすのであれば、専門機関を介した距離の取り方を選ぶことができます。

【介護離職を防ぐ!2025年改正の介護休業制度と仕事の両立支援】

2025年4月から介護離職防止のための企業の義務が強化

親の介護を理由に仕事を辞めたくない人にとって、重要なのが2025年4月1日に施行された改正育児・介護休業法です。

今回の改正では、介護に直面した労働者が仕事を続けられるよう、企業に対する対応義務が強化されました。

主な改正内容は次のとおりです。

  • 介護休業制度などの個別周知:従業員が家族の介護に直面したと申し出た場合、会社は制度の内容や申出先などを個別に説明し、利用意向を確認する。
  • 40歳前後での早期情報提供:介護に直面する前の段階で、介護休業や介護両立支援制度、介護休業給付金などについて情報提供する。
  • 職場環境の整備:介護休業制度を利用しやすくするため、研修、相談窓口の設置、利用事例の提供、制度利用方針の周知などから必要な措置を講じる。
  • 介護休暇の取得要件緩和:労使協定によって継続雇用6か月未満の労働者を対象外とする仕組みが廃止された。
  • テレワーク導入の努力義務:要介護状態の家族を介護する労働者がテレワークを選択できるよう、事業主が措置を講じることが努力義務となった。

特に重要なのは、介護が始まってから慌てて制度を調べるのではなく、40歳前後から会社が情報提供を行う仕組みが設けられたことです。

なお、2025年10月1日施行の柔軟な働き方に関する制度は、主に3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者を対象とした育児関係の改正です。介護関係の改正と混同しないよう注意が必要です。

介護休業は最大93日、3回まで分割できる

介護休業制度は、要介護状態にある対象家族を介護するために仕事を一定期間休める制度です。

対象家族1人につき、通算93日まで、3回に分けて取得できます。

対象となる家族には、父母、祖父母、配偶者、子、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母などが含まれます。

介護休業は、介護をする本人が93日間ずっと自宅で親の世話をするための制度ではありません。厚生労働省も、介護休業を仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間として活用するよう案内しています。

例えば、次のような準備に使えます。

  • 地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談。
  • 訪問介護やデイサービスなどの手配。
  • 老人ホームや介護施設の見学・入居手続き。
  • 兄弟姉妹との役割分担の話し合い。
  • 親の生活費や介護費用の確認。
介護休業給付金は賃金の67%が目安

雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす人は、介護休業期間中に介護休業給付金を受け取れる場合があります。

給付額は、原則として休業開始時賃金日額に支給日数を掛けた金額の67%相当額です。

例えば、厚生労働省の説明では、介護休業開始前の賃金が平均月額20万円程度で、休業中に賃金の支払いがない場合、給付額は月額約13万4,000円が目安とされています。

ただし、給付には上限があり、休業中に会社から賃金が支払われた場合は減額されることがあります。雇用保険の加入期間などの受給要件も確認してください。

介護休暇・短時間勤務・残業免除も活用する

介護休業以外にも、仕事と介護を両立するための制度があります。

  • 介護休暇:通院の付き添いや介護サービスの手続きなど、短期間の対応に利用する。
  • 所定外労働の制限:一定の条件のもとで、介護のために残業免除を請求できる。
  • 時間外労働の制限:法定の上限を超える時間外労働を制限する制度を利用する。
  • 深夜業の制限:一定の条件のもとで、深夜時間帯の勤務を制限できる。
  • 短時間勤務などの措置:勤務時間を短縮するなど、仕事と介護を両立するための措置を利用する。

介護離職を防ぐためには、制度の存在を知っているだけでは不十分です。会社の人事担当者や上司に介護の状況を伝え、就業規則や社内制度を確認することが大切です。

介護離職は現在も無視できない問題

総務省の2022年就業構造基本調査によると、介護・看護を理由に過去1年間で前職を離職した人は全国で10万6,000人でした。

また、同調査では、介護をしながら働いている人は364万6,000人とされています。

この10万6,000人という数字には、調査時点で別の仕事に就いていた人も含まれます。すべての人がそのまま無職になったわけではありません。

それでも、仕事と介護の両立が難しい状況が多くの人に影響していることは明らかです。

【プロの結論】介護を引き受けないことと親を見捨てることは違う

親の介護をしたくない人が考えるべきなのは、「自分が介護するか、親を見捨てるか」という二択ではありません。

法律上の扶養義務、介護保険の利用、親の資産や年金、施設の選択、兄弟姉妹の協力、勤務先の制度などを組み合わせれば、直接介護を担当しない形でも親の生活を支えることは可能です。

特に、自分の心身が限界に達している場合や、過去の虐待によって親と関わることが苦痛な場合には、無理に介護を引き受けるべきではありません。専門職や行政に介護の実務を任せ、必要な範囲で関わる方法を検討してください。

親の生活を守ることと、自分の人生を守ることは両立させてよいのです。

【親の介護をしたくない場合】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:親の介護を拒否すると法律違反になりますか?
A1:親の介護を直接担当しないことだけで、直ちに法律違反になるわけではありません。民法877条は親子間の扶養義務を定めていますが、子どもに必ず同居や身体介護を求める規定ではありません。ただし、具体的な経済的扶養義務については、親の状況や子どもの資力などによって判断が異なります。

Q2:親と絶縁していても介護費用を払う必要がありますか?
A2:絶縁しているだけで扶養義務が自動的に消えるわけではありません。ただし、親子関係の経緯、虐待の有無、自身の収入や生活状況などは、具体的な扶養の程度や方法を検討するうえで考慮される可能性があります。争いがある場合は弁護士や家庭裁判所に相談してください。

Q3:親を老人ホームに入れれば、自分で介護しなくてもよいですか?
A3:施設への入居によって、日常的な身体介護や生活支援を専門職に任せることができます。ただし、入居費用や契約内容の確認、本人の意思確認などは必要です。家族がどこまで関わるかは、施設やケアマネジャーと相談して決められます。

Q4:親に介護保険を使ってほしいのですが、どこに相談すればよいですか?
A4:親が住んでいる地域の地域包括支援センター、または市区町村の介護保険担当窓口に相談してください。要介護認定の申請方法や訪問介護、デイサービス、施設入居などについて案内を受けられます。

Q5:親の介護費用を払えない場合はどうすればよいですか?
A5:まず親自身の年金、預貯金、介護保険の自己負担割合、施設利用料などを確認してください。低所得者向けの負担軽減制度や生活保護などを利用できる場合があります。親族の援助がなければ生活保護を申請できないというわけではないため、自治体の福祉事務所に相談することも大切です。

親の介護をしたくないという気持ちは、決して珍しいものではありません。親子関係が悪い、仕事や育児で余裕がない、経済的な負担が大きいなど、介護を引き受けられない事情は人それぞれです。

2026年現在、民法877条による扶養義務は存在しますが、それは子どもが必ず自分で親の身体介護を行う義務とは異なります。民法879条に基づき、具体的な扶養の程度や方法は、本人や扶養義務者の事情を踏まえて検討されます。

介護保険サービス、地域包括支援センター、老人ホーム、兄弟姉妹との役割分担、介護休業制度などを活用すれば、親の介護を自分一人で抱え込まずに済む可能性があります。

まずは地域包括支援センターに相談し、親の生活状況と必要な介護サービスを整理することから始めてください。

親の介護を自分で引き受けないという選択は、親を見捨てることと同じではありません。親の生活を専門家に支えてもらいながら、自分の仕事、家庭、健康、人生を守ることも、現実的で尊重されるべき選択です。

主な根拠資料: 厚生労働省の介護保険・介護休業制度資料、総務省の就業構造基本調査、2026年3月のLIFULL senior「同居介護に関する意識調査」など。

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橘 圭
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