福男選びの背景には、西宮神社で長く受け継がれてきた十日えびすの信仰があります。単なる新年のイベントではなく、えびす様を迎える祭礼と、参拝者の間に生まれた「走り参り」の習慣が結び付いて発展したものです。
江戸時代の「走り参り」が原型西宮神社の開門神事は、江戸時代ごろに始まったとされています。開門を待っていた参拝者が、門が開くと同時に本殿へ急いで参拝する習慣が、次第に競争の形になったと伝えられています。
この背景には、十日えびすの祭礼に関係する「御狩神事」や「居籠神事(いごもりしんじ)」があります。西宮市の歴史資料によれば、えびす様を静かに迎えるため、かつては地域の人々が夜間の外出や明かりを控える習わしがありました。開門を待ち、夜明けに参拝するという伝統が、現在の神事につながっています。
阪神電鉄の開業で参拝者が増加現在の福男選びにつながる歴史を理解するうえで、1905年(明治38年)の阪神電鉄の開業も重要です。
鉄道の発達によって、大阪など遠方からの参拝者が増加しました。神社と鉄道会社による祭礼の広報や集客も進み、十日えびすは広域から人々が訪れる行事へと変化していきました。
歴史研究者の平山昇氏による論考でも、阪神電車の登場が西宮神社の参詣者増加に大きな影響を与えたことが指摘されています。福男選びは、昔から現在と同じ形式で行われていたわけではなく、交通網や都市文化の変化とともに発展した神事なのです。
2005年から抽選制度が導入された背景現在の福男選びを特徴付ける抽選制度にも、過去の出来事が関係しています。
2004年の福男選びでは、特定の参加者を勝たせようとする集団による妨害行為が問題になりました。その後、2005年からスタート位置を抽選で決める仕組みが導入されました。
抽選制度の目的は、前列の場所取りをめぐる不公平を減らし、参加者が公平な条件でスタートできるようにすることです。現在のA・Bブロックによるスタート位置の決定は、こうした経緯を踏まえた運営上の仕組みです。
十日えびす2025の開催日程十日えびすは、毎年1月9日から11日までの3日間にわたって開催されます。2025年も同じ日程で行われました。
- 1月9日:宵えびす
- 1月10日:本えびす・開門神事福男選び
- 1月11日:残り福
福男選びが行われるのは、本えびすに当たる1月10日の早朝です。午前6時の開門が大きな節目となります。なお、十日えびすの祭礼そのものは3日間続くため、福男選びだけが祭りのすべてではありません。
【2026年最新】豊川哲平が一番福!2025年との違いを比較

2025年の福男選びを振り返るうえで欠かせないのが、翌2026年1月10日に行われた大会です。2026年の一番福は、同志社大学4年生の豊川哲平さん(22)。開門直後に転倒しながらも順位を上げ、最後に逆転する展開で注目を集めました。
2026年の福男3人2026年の上位3人は、次の顔ぶれです。
- 一番福・豊川哲平さん(22歳):同志社大学4年生。兵庫県加東市出身。高校時代まで野球部に所属。
- 二番福・澤井歩さん(21歳):神戸国際大学3年生。
- 三番福・赤松大樹さん(22歳):びわこ成蹊スポーツ大学4年生。
3人とも大学生で、初参加だったと神戸新聞は報じています。豊川さんは春から銀行員として働く予定で、新生活を迎える年の始まりに一番福を獲得しました。
豊川哲平さんが逆転できた理由2026年のレースで特に注目されたのは、豊川さんの逆転劇です。
豊川さんは抽選番号19番で、2列目の中央付近からスタートしました。スタート直後に転倒し、前を走る参加者に遅れを取りましたが、そこから順位を上げていきます。
本殿直前では先頭を走っていた参加者が転倒。その隙に豊川さんが前に出て、一番福を獲得しました。本人も序盤に転倒していたことから、単純なスタートダッシュだけでは結果が決まらない大会の特徴が表れた一戦でした。
「夢か現実か分からない」
一番福となった豊川さんは、初めての経験に驚きと喜びを示しました。転倒から立て直し、最後まで走り切った結果が大逆転につながりました。
2025年と2026年の福男選びを比較| 比較項目 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|
| 開催日 | 1月10日 | 1月10日 |
| 一番福 | 大岸史弥さん | 豊川哲平さん |
| 年齢 | 17歳 | 22歳 |
| 所属 | 兵庫県立宝塚高校 | 同志社大学 |
| 二番福 | 小松勇輝クワァベナさん | 澤井歩さん |
| 三番福 | 矢吹彰大さん | 赤松大樹さん |
| 参加者規模 | 約5,000人 | 約5,000人 |
| 特徴 | 陸上部の高校生が初挑戦で優勝 | スタート直後の転倒から大逆転 |
| 開門時刻 | 午前6時 | 午前6時 |
| 走行距離 | 約230メートル | 約230メートル |
両年とも、午前6時に表大門が開き、約230メートルのコースを走り、本殿への到着順に上位3人が福男に認定される基本的な仕組みは同じです。
大きな違いは、勝者のプロフィールとレース展開です。2025年は17歳の高校生が初参加で一番福を獲得したのに対し、2026年は22歳の大学生が転倒から巻き返して優勝しました。
また、2025年の三番福だった矢吹彰大さんと、2026年の一番福となった豊川哲平さんは、いずれも同志社大学の4年生として報じられています。大学は同じですが、別々の参加者による異なる年の結果です。
【プロの結論】福男選びの本当の魅力は速さだけではない
福男選びを単なる短距離走として見ると、約230メートルのコースを誰が最初に走り抜けるかという結果だけに注目しがちです。しかし、2025年と2026年の結果を比べると、もう少し深い魅力が見えてきます。
抽選と走力、そして当日の状況が結果を左右する最初に重要なのは、スタート位置です。約5,000人が集まる中、前列の108人と次列の108人に選ばれるかどうかで、スタート時の条件は大きく変わります。
一方、抽選で有利な位置を得ても、必ず福男になれるわけではありません。2026年の豊川さんのように、序盤で転倒しても最後まで順位を上げる参加者がいます。逆に、先頭を走っていても最後のカーブで転倒すれば順位を落とす可能性があります。
つまり、福男選びは抽選だけで決まるものでも、陸上競技のタイムだけで決まるものでもありません。スタート位置、走力、コースへの対応、当日の展開が重なって結果が生まれます。
福男は一番福だけではないもう一つの誤解は、福男という称号が一番福だけに与えられると思われていることです。
西宮神社の開門神事では、本殿への到着順で一番福・二番福・三番福の3人が認定されます。2025年なら大岸さん、小松さん、矢吹さんの3人が福男です。
それぞれが福を分け与える存在として扱われるため、二番福や三番福も正式な福男です。一番福だけが唯一の称号というわけではありません。
歴代の一番福を見ると分かる伝統の継続西宮神社の公式サイトには、歴代福男の記録が掲載されています。近年では、2023年の植本亮太さん、2024年の高谷望巳さん、2025年の大岸史弥さんが一番福として記録されています。
公式一覧には1921年からの記録も掲載されており、長い年月をかけて神事が継承されてきたことが分かります。2021年と2022年には感染症の影響で認定が行われなかったものの、2023年から再び上位3人の認定が続いています。
この歴史から読み取れるのは、福男選びが単に勝者を決める競争ではなく、地域の信仰、参拝者の参加、神社の伝統が一体となった行事だということです。
【西宮神社の福男選び2025】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2025年の一番福は誰ですか?
A1:兵庫県立宝塚高校2年生だった17歳の大岸史弥さんです。初参加で一番福を獲得しました。
Q2:2025年の二番福と三番福は誰ですか?
A2:二番福は龍谷大学3年生の小松勇輝クワァベナさん、三番福は同志社大学4年生の矢吹彰大さんです。なお、西宮神社の歴代一覧では小松さんの名前は「有輝」と表記されています。
Q3:福男選びには何人くらい参加しますか?
A3:2025年は約5,000人が開門を待ちました。そのうち前列・次列の抽選で選ばれるのは合計216人です。
Q4:福男選びは毎年いつ開催されますか?
A4:毎年1月10日の午前6時に行われます。十日えびすは1月9日から11日までの3日間です。
Q5:福男選びの参加方法は?
A5:前夜に受付を行い、抽選でスタート位置を決める方式です。2025年は受付枠が約1,500人で、抽選によってA・Bブロック各108人が選ばれました。詳しい受付時刻や場所は年度ごとの案内を確認してください。
Q6:2026年の一番福は誰ですか?
A6:同志社大学4年生の豊川哲平さんです。2026年1月10日の福男選びで、スタート直後に転倒しながらも逆転して一番福を獲得しました。
Q7:福男選びの「てんびんカーブ」とは何ですか?
A7:表大門から約50メートル進んだ地点にある、右に約130度曲がる急カーブの通称です。石畳に変わる場所でもあり、参加者が転倒しやすい最初の難所として知られています。
2025年の西宮神社の福男選びでは、17歳の大岸史弥さんが一番福を獲得しました。二番福は小松勇輝クワァベナさん、三番福は矢吹彰大さんで、約5,000人が集まる中、初参加の3人が福男に選ばれました。
2026年には同志社大学の豊川哲平さんが一番福となり、スタート直後の転倒から逆転する展開が話題になりました。2025年と2026年の結果を比較すると、若い世代の挑戦と、最後まで順位が変わり得るコースの難しさがよく分かります。
福男選びの魅力は、230メートルを誰よりも速く走ることだけではありません。十日えびすの歴史、開門を待つ参拝者の熱気、抽選による公平なスタート、そして福を周囲に分け与えるという伝統が一つになっています。
2027年も1月10日の開門神事に注目が集まります。歴代の福男たちがつないできた伝統の中で、次に一番福を手にするのは誰なのか。西宮神社の新春の風物詩は、これからも多くの人に福と感動を届けていくはずです。