本作の個性を理解するには、監督のチャウ・シンチー(周星馳)がこれまで手掛けてきた作品を振り返る必要があります。
代表作には『少林サッカー』(2001年)、『カンフーハッスル』(2004年)、『ミラクル7号』(2008年)、『人魚姫』(2016年)などがあります。
シンチー作品に共通するのは、常識を覆す設定、身体表現を生かしたコメディ、極端な演出、そして笑いの裏側にある人間ドラマです。
『少林サッカー』『カンフーハッスル』との共通点『少林サッカー』では、伝統武術とサッカーを組み合わせ、あり得ない必殺技を笑いと興奮に変えました。『カンフーハッスル』では、下町を舞台にした物語の中に、漫画的な誇張表現と本格的なアクションを融合させています。
『西遊記~はじまりのはじまり~』にも、こうした演出の特徴が引き継がれています。妖怪の姿は奇抜で、戦闘は大げさで、人物の感情表現も振り切っています。
ただし、本作ではアクションコメディだけでなく、宗教的な慈悲や愛情、喪失といったテーマを前面に押し出しています。笑わせた直後に悲劇を見せるという大胆な構成も、シンチー作品らしい特徴です。
脚本に約10年を費やした作品映画.comが2014年に掲載した来日インタビューでは、チャウ・シンチーが本作の脚本制作に約10年を費やしたことを明かしています。
また、監督は『西遊記』をシリーズ作品として捉え、すでに続編を構想していることも語っていました。
本作が単なる有名小説の映画化ではなく、長い時間をかけて構想された独自の映像シリーズの出発点だったことが分かります。
【続編情報】『西遊記2~妖怪の逆襲~』とのつながり

『西遊記~はじまりのはじまり~』には、正式な続編があります。タイトルは『西遊記2~妖怪の逆襲~』。中国で2017年に製作され、日本では2017年9月8日に劇場公開されました。
続編では監督がチャウ・シンチーからツイ・ハークへ交代続編で大きく変わったのは監督です。前作のチャウ・シンチーに代わり、香港映画界を代表する監督の一人であるツイ・ハークがメガホンを取りました。
チャウ・シンチーは監督ではなく、製作と脚本を担当しています。したがって、続編もシンチーの世界観を引き継ぎながら、映像演出はツイ・ハークのスタイルに変化しています。
前作と続編の比較| 項目 | 第1作 | 第2作 |
|---|---|---|
| 邦題 | 西遊記~はじまりのはじまり~ | 西遊記2~妖怪の逆襲~ |
| 原題 | 西遊・降魔篇 | 西遊2・伏妖篇 |
| 製作年 | 2013年 | 2017年 |
| 日本公開 | 2014年11月21日 | 2017年9月8日 |
| 監督 | チャウ・シンチー | ツイ・ハーク |
| 製作・脚本 | チャウ・シンチー | チャウ・シンチー、ツイ・ハーク |
| 物語の時期 | 弟子と出会うまで | 天竺への旅の途中 |
| 玄奘役 | ウェン・ジャン | クリス・ウー |
| 孫悟空役 | ホアン・ボー | ケニー・リン |
続編ではキャストも大幅に変更されています。玄奘役はウェン・ジャンからクリス・ウーへ、孫悟空役はホアン・ボーからケニー・リンへ交代しました。
一方、スー・チーは段役として続編にも出演しています。第1作の物語を踏まえたうえで鑑賞すると、シリーズとしてのつながりを楽しめます。
続編のあらすじは天竺への旅の途中から『西遊記2~妖怪の逆襲~』では、三蔵法師と孫悟空、猪八戒、沙悟浄の一行が、天竺を目指して旅を続けています。
旅の途中で立ち寄った豪邸では、美女たちの正体が人間を襲う妖怪であることが判明。さらに比丘国では、国王や妖怪たちをめぐる新たな騒動に巻き込まれていきます。
第1作が玄奘の成長と弟子たちとの出会いを描いたのに対し、第2作は一行が旅を続けながら困難に立ち向かう冒険活劇です。
前作のような玄奘と段の出会いを中心とした物語を期待すると雰囲気の違いを感じる可能性がありますが、妖怪との戦闘や奇想天外な演出を楽しみたい人には続けて鑑賞する価値があります。
なお、2026年に作品を振り返る際も、シリーズの鑑賞順は第1作の『西遊記~はじまりのはじまり~』、続編の『西遊記2~妖怪の逆襲~』という順番が自然です。
【よくある質問】西遊記はじまりのはじまりに関するFAQ
Q1:『西遊記~はじまりのはじまり~』は実話ですか?
回答:実話ではありません。玄奘の西方への旅を背景にした古典小説『西遊記』を題材に、チャウ・シンチーが独自の設定と人物関係を加えたフィクションです。
Q2:段は原作の『西遊記』にも登場しますか?
回答:本作の段は映画オリジナルのキャラクターです。スー・チーが演じる女性妖怪ハンターで、玄奘の精神的な成長や恋愛ドラマに深く関わっています。
Q3:日本語吹き替え版の声優は誰ですか?
回答:玄奘役が斎藤工、段役が貫地谷しほり、孫悟空役が山寺宏一、猪八戒役が近藤春菜、沙悟浄役が箕輪はるか、空虚王子役が神谷浩史です。ほかにも田中真弓、野沢雅子、羽佐間道夫、立木文彦などが参加しています。
Q4:『西遊記~はじまりのはじまり~』の結末で段は生き残りますか?
回答:段は孫悟空との最終決戦で命を落とします。玄奘は段への愛情を伝えますが、二人が結ばれることはありません。段が残したわらべ唄の本が、孫悟空を鎮める重要な鍵になります。
Q5:続編はありますか?
回答:あります。2017年公開の『西遊記2~妖怪の逆襲~』が正式な続編です。ツイ・ハークが監督し、チャウ・シンチーが製作・脚本を担当しています。
Q6:子どもと一緒に見ても大丈夫ですか?
回答:日本公開時のレイティングはPG12です。妖怪の不気味な造形や暴力的な戦闘、刺激の強い描写があるため、明るい子ども向けアニメのような感覚で選ぶのはおすすめできません。視聴前に保護者が内容を確認すると安心です。
『西遊記~はじまりのはじまり~』は、2013年製作、2014年日本公開の中国映画です。『少林サッカー』『カンフーハッスル』で知られるチャウ・シンチーが監督・脚本を務め、若き玄奘が妖怪退治を通して孫悟空たちと出会うまでを描いています。
作品の魅力は、原作に忠実な映像化ではなく、玄奘を成長途上の青年として描き直した点にあります。スー・チー演じる段という映画オリジナルのヒロインを加えることで、妖怪退治の物語に恋愛と喪失のドラマが生まれました。
また、ウェン・ジャン、ホアン・ボー、ショウ・ルオらの出演に加え、斎藤工、貫地谷しほり、山寺宏一、神谷浩史らによる日本語吹き替え版も見どころです。
中国で2013年の年間映画興行ランキング1位を記録し、2017年には『西遊記2~妖怪の逆襲~』も公開されました。単独の映画としても、シリーズの出発点としても楽しめる作品です。
【プロの結論】本作を楽しむ最大のコツは、従来の『西遊記』との違いを間違いや改変として捉えるのではなく、チャウ・シンチーが描いたもう一つの玄奘の物語として受け止めることです。笑い、奇抜な妖怪、激しいアクション、そして段との切ない関係。そのすべてが重なって、誰もが知る物語に新しい解釈を与えています。
2026年に初めて鑑賞する人にも、昔見た作品を改めて見直したい人にも、古典と現代映画の大胆な融合を味わえる一本です。